ようこそBeckワールドへ〜「guero」

Guero

Guero

実はBeckを買ったのはこれがはじめてである。
ということでBeckファンに怒られるので、あまり彼に関して詳しいことは書けない。このアルバムに関してよく書かれているのは、彼が原点回帰しているという事、『オディレイ』を思い出させる内容ということである。『ロッキングオン』のインタビューも読んだが、彼は今、非常に公私共に充実しているようである。


一聴すると、かなりバリエーションのある楽曲群とその豊富は音の引き出しに驚かされる。エレクトリック・ビートにアコースティックのスライドギターがかぶさったり、Beck流ボサノバ風有り、おもちゃのようなテクノあり。やはりデビュー当時、その天才といわれた所以はそこにはあった。


そして良く聞き込んでいくと、その一見無造作に散らばっているような、おもちゃのような音の塊は、良く計算されて配置されているものだということがわかる。決して適当に放り出したのでなく、その音でなければならないというような配置の仕方をしていることがわかる。


しかしこれが音の玉手箱というようなきらびやかな感じにならないのは、彼の持っているドライな音感とざらついた感触、そして何よりも彼の音がもつ「密室感」がもたらすものであろう。彼の音楽からは、見知らぬ才能がセッション等で出会って生じる新たな相乗効果とかは考えられない。やはりBeckがいろいろ考えながら密室で試行錯誤して作り上げた感がするのだ。


さて、まさにBeckワールドというかBeckの部屋にようこそといった感じなのだが、人によって、この密室感を圧迫感として感じる人もいるだろう。僕としては一曲目のようなBeck流ファンクロックは気持ちいいのだが、他の曲に関しては日常頻繁に聞きたいという感じではない。ただ、決して悪いということではない。また、時間がたったら聞きたくなるだろう、というような、不思議なスパイスが入っているようだ。